【JPIERE-0602(v10)】会社間取引仕訳

 iDempiereはマルチテナントで、1つのシステムの中に複数のテナント(=会社)を登録して運用することもできますし、1つのテナントで、複数のグループ企業をまとめて管理/運用することもできます。

 1つのテナントで、複数のグループ企業をまとめて管理/運用する場合は、会社間の取引を管理する機能として、カウンター伝票と言われる機能や、組織ごとに貸借対照表がバランスするように、調整してくれる仕訳を自動起票するような機能があります。

 組織ごとに貸借対照表をバランスするように調整してくれる仕訳は、会計学的に考えるといわゆる「社内取引」とか「本支店会計」にあたる機能で、貸借に分かれる仕訳の組織が異なる場合に起票されます。

 組織毎に貸借対照表を必要としない場合、この組織ごとに貸借対照表をバランスするように調整してくれる仕訳は不要です。

 しかしながら、貸借対照表は組織毎にはバランスさせなくても、会社毎には必ずバランスさせる必要があります。そのため、組織ごとに貸借対照表をバランスするように調整する必要はなくても、会社をまたぐ仕訳が起票された場合には、貸借対照表をバランスするように調整してくれる仕訳を起票できるようにしました。

 この仕訳は下記のようなケースに使用することを想定した機能です。

  • グループ企業の債権の回収を、特定の1社が代理して行っているようなケース。
  • グループ企業の債務の支払いを、特定の1社が代理して行っているようなケース。

  上記のような業務を行っていると、1つの仕訳の貸借で会社をまたぐような仕訳が起票されますので、それを調整する仕訳を起票させないと、会社単位の貸借対照表がバランスしなくてなってしまいます。

 上記のようなケース以外では基本的に、1つの仕訳の貸借で会社をまたぐような仕訳は起票されるようなことはありませんので(もしあったとしたら、それを意図せず会社をまたぐような処理をしてしまったことにより誤操作ですので)、この設定をしておくことで、誤操作を把握することにもつながります。

使用例

グループ企業の債権の回収を、特定の1社が代理して行っているようなケース

"グループ企業A"の債権を、"本社"が回収しており、回収後に"グループ企業A"に振り込んでいる場合。

◆売上請求伝票

グループ企業Aの売上請求伝票

売上請求伝票
売上請求伝票
売上請求伝票の自動仕訳
売上請求伝票の自動仕訳

 

◆入金伝票

 "グループ企業A"の債権を"本社"が回収。

入金伝票
入金伝票
入金伝票の自動仕訳
入金伝票の自動仕訳

 

◆消込伝票

売上請求伝票の組織が"グループ企業A"で、入金伝票の組織が"本社"の場合、 消込伝票で会社をまたぐ仕訳が起票されることになりますので、それをバランスさせる仕訳が自動起票されます。

 

◆出納帳

上記入金伝票に対応する出納帳を記帳します。

 

◆本社からグループ企業Aに回収金額を振り込む。

会社間をまたぐ出納帳の残高振替を行います。

本社の出納帳
本社の出納帳

本社の出納帳は回収した債権の金額をグループ企業Aに振り込むので、記帳金額がマイナスで減額処理して、その分、会社間取引債務勘定を減らす仕訳になります。

本社の出納帳の自動仕訳
本社の出納帳の自動仕訳

グループ企業Aの出納帳は本社から振り込まれた分、増額します。そして、その分、会社間取引債権勘定が減額されます。

グループ企業Aの出納帳
グループ企業Aの出納帳
グループ企業Aの出納帳の自動仕訳
グループ企業Aの出納帳の自動仕訳

グループ企業の債務の支払いを、特定の1社が代理して行っているようなケース

"グループ企業A"の債務を、"本社"が支払っており、"グループ企業A"は、後日"本社"にまとめて支払っている(振り込んでいる)場合。

◆仕入請求伝票

グループ企業Aの仕入請求伝票

グループ企業Aの仕入請求伝票
グループ企業Aの仕入請求伝票
グループ企業Aの仕入請求伝票の自動仕訳
グループ企業Aの仕入請求伝票の自動仕訳

 

◆支払伝票

 "グループ企業A"の債務を"本社"が支払う。

支払伝票の自動仕訳
支払伝票の自動仕訳

 

◆消込伝票

仕入請求伝票の組織が"グループ企業A"で、支払伝票の組織が"本社"の場合、 消込伝票で会社をまたぐ仕訳が起票されることになりますので、それをバランスさせる仕訳が自動起票されます。

消込伝票の自動仕訳
消込伝票の自動仕訳

 

◆出納帳

支払伝票に対応する出納帳を記帳します。

 

◆グループ企業Aが本社に支払う

本社がグループ企業Aに代わって支払った代金を、グループ企業Aが本社に支払います。

グループ企業Aの出納帳
グループ企業Aの出納帳

グループ企業Aは、本社に対する債務を支払う出納帳を記帳します。

グループ企業Aの出納帳の自動仕訳
グループ企業Aの出納帳の自動仕訳

本社はグループ企業に対する債権が入金される出納帳を記帳します。

これで、それぞれの会社の貸借対照表がバランスした状態で、一連の取引が完了できます。

会社間取引の仕訳を起票する設定

アプリケーション辞書の設定変更

会社間取引仕訳は初期設定の状態では無効にしています。これは、有効にしておくと、クライアント(テナント)の初期セットアップにおいて、入力を求められるからです。

そのため会社間取引仕訳を起票したい場合は、会計スキーマの総勘定元帳タブにある下記のカラムとフィールドをアクティブにして下さい。

  • JP_CorporationDueTo_Acct
  • JP_CorporationDueFrom_Acct

会計スキーマウィンドウ

会社間取引の仕訳を起票する場合には、会計スキーマの「会社間取引仕訳を記帳する」チェックボックスをONにして下さい。

◆会計スキーマタブ

◆総勘定元帳タブ

「会計スキーマ」タブの「会社間取引仕訳を記帳する」チェックボックスをONにすると、「総勘定元帳」タブに「会社間取引債権勘定」と「会社間取引債務勘定」フィールドが表示され、勘定科目を設定できます。

「会社間取引債権勘定」と「会社間取引債務勘定」は、「組織間取引債権勘定」と「組織間取引債務勘定」と同じように使用されます。

【補足説明】「会社間取引債権勘定」と「会社間取引債務勘定」は同じ勘定科目を設定しておくのがオススメ

「会社間取引債権勘定」と「会社間取引債務勘定」とで異なる勘定科目を設定できますが、両方に同じ勘定科目を設定して、借方残であれば債権で、貸方残であれば債務であるというような使い方が良いのではないかと思います。

ちなみに「会社間取引債権勘定」と「会社間取引債務勘定」に勘定科目が設定されていない場合は、「組織間取引債権勘定」と「組織間取引債務勘定」に設定されている勘定科目が使用されます。

会社間取引仕訳の判定

会社間取引仕訳かどうかの判定は、仕訳の組織の組織情報タブの法人マスタフィールドの値で判定しています。仕訳の組織で、この法人マスタが異なる組織が同一の仕訳に使用されている場合は、会社間取引仕訳と判定して、会社毎にバランスするように仕訳を起票します。

1つの仕訳の中に、法人マスタが異なる組織があった場合には、会社間取引仕訳と判定しています。

カスタマイズ情報

カラムの追加

◆C_AcctSchemaテーブルにIsCorpBalanceJPカラムを追加

◆C_AcctSchema_GLテーブルにJP_CorporationDueTo_Acctカラムを追加

◆C_AcctSchema_GLテーブルにJP_CorporationDueFrom_Acctカラムを追加

 

モディフィケーションクラス

◆org.compiere.acct.Fact

カスタマイズ履歴

2024年4月18日(v11):IsCorpBalanceJPカラムが無くても警告が出力されないように修正