複式簿記の大原則に、借方と貸方の金額を一致させる(バランスさせる)というのがあります。
振替仕訳伝票に予め備わっているiDempiereの標準機能として、貸借の金額が一致しているのをチェックする仕組みはありますし、バランスしていない時にはエラーにする設定もあります。しかしながら、これらの機能は、ちょっと使い難かったりする時もあるので、JPiereオリジナルの貸借の金額のバランスチェックを実装しました。
iDempiere標準の貸借バランスチェック機能の紹介
今回、JPiereで実装した振替仕訳伝票の貸借バランスチェック機能の説明の前に、iDempiere標準の貸借バランスチェック機能について紹介します。
貸借調整勘定
iDempiereの仕訳の根幹にある機能として、貸借がバランスしていない仕訳が万が一起票された場合、その差額を貸借調整勘定[SuspenseBalancing_Acct]というのを使用して、強制的にバランスするようにしてくれます。
そのため自動仕訳などで、何らかの要因で貸借がバランスできなかったデータは、貸借調整勘定を使って記帳されている仕訳のレコードを探して確認する事ができます。
しかしながら、貸借調整勘定を使用した仕訳が起票されるような事は、ほとんどありません!!万が一の保険的な機能です。
この貸借調整勘定を使った仕訳の起票が嫌な場合は、会計スキーマの総勘定元帳タブの「貸借調整勘定に記帳する」フラグをOFFにすると、貸借調整勘定は使用せずに、「転記エラー」にする事ができます。
基本的に、「貸借調整勘定に記帳する」をOFFにすれば、振替仕訳伝票でもバランスしていない伝票を完成にする事はできないのですが、「貸借調整勘定に記帳する」をOFFにすると思いがけないタイミングで、チェックされて転記エラーになってしまう事があり、ちょっとOFFにしずらいです・・・。
このフラグは、全ての伝票に影響し、伝票によっては、最終的にはバランスするようになっているのに、その前にチェックしてエラーにされたり、仕訳が転記されない伝票でもチェックしたりと、OFFにする事により、余計に面倒になってしまう感じです・・・。 T。T
記帳予定金額
振替仕訳伝票には[記帳予定金額]フィールドというのがあり、0以外の数値を設定すると、借方の合計金額が設定した数値と同じにならないと伝票を完成にする事ができません。
記帳予定金額は、予め計算しないと入力できないので、まず計算が面倒です。(*´▽`*)
そして、貸借の金額がバランスしていても、記帳予定金額と異なると、エラーになります。
さらに、記帳予定金額とチェックする金額は借方合計の金額ですので、貸方合計は違う金額でも伝票を完成にできます。※バランスしていない場合は、貸借調整勘定が使用されます。
これらの理由により、振替仕訳伝票におけるiDempiere標準の貸借バランスチェック機能は、使いずらいので、JPiereオリジナルの貸借バランスチェック機能を実装しました。
振替仕訳伝票の貸借バランスチェック機能
JPiereでカスタマイズした振替仕訳伝票の貸借バランスチェック機能は、とてもシンプルです。システムコンフィグ設定に、 "JP_GL_JOURNAL_BALANCE_CHECK_POSTINGTYPE"を追加して、貸借バランスチェックを行いたい転記タイプの定数を設定して下さい。
転記タイプには、下記の定数が設定されています。必要に応じて複数設定する事ができます。
- A=実績
- B=予算
- E=コミットメント
- R=予約
- S=統計
複数を設定したい場合は、システムコンフィグ設定の検索キーの値に、定数を設定したい分だけ並べて入力して下さい。
コンフィグレベルはクライアントを想定しており、クライアント毎に設定できまるように実装しています。
貸借のバランスチェックは、[確認中にする]処理で行われます。そのため、承認ワークフローの前にチェックできます。また直接的に[完成にする]時にも自動的に呼び出されますので、チェック漏れを防げます。
カスタマイズ情報
クラス
- jpiere.base.plugin.org.adempiere.base.JPiereGLJournalModelValidator