2023年10月から導入を予定されている適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)の買手側の処理として、仕入税額控除の適用を受けるために、売り手側が適格請求書発行事業者かどうか区分して管理する必要があります。
このカスタマイズ管理番号では、買手側の対応として、仕訳データに適格請求書発行事業者かどうかの情報を保持するようにしました。この事により、仕訳帳ピボットウィンドウで区分して集計する事ができて消費税の申告書を作成する時に確認がしやすくなります。
前提
適格請求書かどうか伝票明細の税金情報マスタで区分する方法
インボイス制度導入における買手側の処理として、適格請求書発行事業者か否かを区分管理する1つの方法は、伝票の明細に入力する税金情報マスタを使い分ける事です。同じ10%の消費税でも、適格請求書発行事業者か否かで異なる税金情報マスタを使えば、データを区分管理できます。
税金情報マスタの情報は仕訳にも引き継がれますので、これで適格請求書発行事業者かどうか区分管理はできますが、以下のような懸念事項もあるかなと思います。
◆ユーザーの運用負荷が高くなる
この方法では、請求書毎に適格請求書に該当するかどうかユーザーが判断して、税金情報マスタの入力を変更する必要があります。そのため、データ入力のユーザーの負荷は高くなります。
◆確認と誤入力の訂正が面倒
この方法は、ユーザーの判断に依存するため、少なからず誤入力は発生するものと思います。誤入力が無い事を確認するためには、対象データを一通り全部確認する必要があり、確認が手間です。また誤入力があった場合に、それを訂正しようとすると、仕入請求伝票をリバースして再登録しなといけないなど、訂正も面倒です。
【ポイント】インボイス制度に対応する運用負荷を軽減する!!
税金情報マスタで区分する方法は、運用負荷が高くなるため、インボイス制度に対応する運用負荷を軽減するために、このカスタマイズを行っています!!
カスタマイズ内容
取引先マスタの適格請求書発行事業者の情報を、タイムスタンプ的に仕訳に保持する方法
取引先マスタ(C_BPartnerテーブル)と仕訳帳(Fact_Acctテーブル)に適格請求発行事象者かどうかの情報を追加して、転記時に、取引先マスタのその情報を仕訳に引き継ぎます。
この事により、仕訳帳の同フラグは適格請求書発行事業者か否かのタイムスタンプ的な役割を持ちます。そして申告時には、取引先マスタと仕訳帳の同フラグのステータスが異なるデータに注力して確認すればよく確認範囲を限定し省力化する事ができます。
◆取引先マスタ
- 適格請求書発行事業者…適格請求書発行事業者の場合は、ONにして下さい。
- 適格請求書発行事業者登録番号…適格請求書発行事業者がONの時に表示されるフィールドで、適格請求書発行事業者登録番号を入力して下さい。
- 適格請求書発行事業者登録日…ここに入力した日付以降の転記日付の仕訳に、適格請求書発行事業者の情報が引き継がれます。入力が無い場合は、仕訳の日付に関係なく、適格請求書発行事業者の情報が引き継がれます。
◆仕訳
仕入れ等に係る消費税の場合に、取引先マスタの適格請求書発行事業者と適格請求書発行事業者登録番号の情報を引き継ぎます。取引先マスタに適格請求書発行事業者登録日が入力されている場合は、その日以降の転記日の仕訳に対して、格請求書発行事業者と適格請求書発行事業者登録番号の情報が引き継がれます。
【補足説明】データの修正方法
このカスタマイズは、取引先マスタの適格請求書発行事業者の情報を仕訳にタイムスタンプ的に保持するので、取引先マスタが適切にメンテナンスされていなかった場合など、仕訳に保持している適格請求書発行事業者の情報を修正したい場合もあると思います。そのような場合に、対象の伝票をリバースして再登録するのはとても面倒ですので、簡易的な方法として下記のような対応も可能だと思います。
- 修正しない ・・・ 勘定科目の残高に影響がある情報では無いので申告が正しく行われていれば、システム上のデータは修正しなくても良いという割り切った考え方もできると思います。
- 再転記 ・・・ 取引先マスタの上記2つのフィールドのデータを正しく修正し、再転記を実行する事で仕訳帳の同フィールドのデータは正しくなります。
- 仕訳帳で直接修正させる ・・・上記2つのフィールドは仕訳の残高には影響しないので、仕訳帳上は上記2つのカラムは編集可能にして直接修正を許可する運用も考えられるかと思います。
【JPIERE-0484】仕訳帳ピボットの活用
iDempiere/JPiereの消費税関連の機能は、申告書を作成するための情報提供を行う事を目的に作成しています。この目的を達成するために、仕訳1つ1つに対して消費税の情報を保持するようにしています。
仕訳帳ピボットを使用すると、仕訳に保持しているそれらの情報を簡単にクロス集計でき、色々な切り口でデータを確認する事ができるので、申告書の作成も容易に行えるはずです。
このカスタマイズに伴い、仕訳帳ピボットのベースとなっているFact_Acct_JP_Vビューに下記のカラムを追加しています。
- 適格請求書発行事業者(取引先マスタ) …取引先マスタの適格請求書発行事業者の情報
- 適格請求書発行事業者(仕訳帳)…転記時の取引先マスタの適格請求書発行事業者の情報のタイムスタンプ
- 適格請求書発行事業者登録番号…転記時の取引先マスタの適格請求書発行事業者登録番号のタイムスタンプ
【補足説明】適格請求書発行事業者の確認範囲
適格請求書発行事業者(取引先)と適格請求書発行事業者(仕訳帳)の値が異なっているデータは、期の途中で適格請求書発行事業者かどうか変更になっているので、そのデータを中心に確認すれば良いので、確認する対象のデータが絞れて効率的に確認できるのではないかと思います。
カスタマイズ情報
追加カラム
◆C_BPartnerテーブル
- 適格請求書発行事業者[IsQualifiedInvoiceIssuerJP]
- 適格請求書発行事業者登録番号[JP_RegisteredNumberOfQII]
- 適格請求書発行事業者登録日[JP_RegisteredDateOfQII]
◆Fact_Acctテーブル
- 適格請求書発行事業者[IsQualifiedInvoiceIssuerJP]
- 適格請求書発行事業者登録番号[JP_RegisteredNumberOfQII]
変更したビュー
◆Fact_Acct_JP_Vビュー【JPIERE-0484】仕訳帳ピボット
下記のカラムを追加しました。
- 適格請求書発行事業者(取引先マスタ) [IsQualifiedInvoiceIssuerBPJP]
- 適格請求書発行事業者(仕訳帳) [IsQualifiedInvoiceIssuerJJP]
- 適格請求書発行事業者登録番号 [JP_RegisteredNumberOfQII]
変更したクラス
- jpiere.base.plugin.org.compiere.acct.Doc_InvoiceJP
- jpiere.base.plugin.org.compiere.acct.Doc_JPRecognition
- jpiere.base.plugin.org.compiere.acct.Doc_BankStatementJP
- jpiere.base.plugin.org.compiere.acct.Doc_GLJournalJP
- custom.contract.jpiere.base.plugin.org.compiere.acct.Doc_JPRecognition