オープンソースのERP iDempiereの標準仕様では、売上に関わる消費税は、売上請求伝票で計算し、仕入に関わる消費税は仕入請求伝票で計算されます。
JPiereでは売上請求伝票を、会計的に売り上げを計上するタイミングで起票し、請求書を発行するタイミングとわけらえるように【JPIERE-0106】まとめ請求書を追加しました。
消費税を売上の計上タイミングで計算する事(売上請求伝票で計算する事)は合法的であり、本来まとめ請求書では、売上請求伝票で計算した消費税を合算して請求すれば良いだけです。
しかしながら、”売上請求伝票で計算した消費税をまとめ請求書で単純に合算した金額”と、”まとめ請求書の売上合計金額から消費税を再計算した金額"は、端数処理の影響で数円ズレる可能性があり、そのため請求する消費税額をまとめ請求書の合計金額から計算した金額に合わせたいという実務面からの要請があります。
そこで、このカスタマイズでは、まとめ請求書の合計金額から消費税を再計算できるようにしました。そして同様の事を【JPIERE-0274】支払依頼伝票でもできるようにしました。
加えて、インボイス制度に対応しやすいように、税額計算タブを追加しています。税額計算タブで税金情報マスタ毎に課税標準額と税額を集計していますので、証票などへの表示もしやすいのではないかと思います。
ページ内目次
【補足説明】摘要科目による外税と内税の明細が混合している売上請求伝票がある場合の消費税の再計算
【JPIERE-0369】摘要科目による外税と内税の明細の混合対応を行っている売上請求伝票をまとめ請求書で消費税を再計算する場合、適用科目で使用する税金情報マスタは、伝票レベルフラグをOFFにして下さい。
売上請求伝票で、外税と内税の明細を混合する場合、適用科目の明細の税金情報マスタは伝票レベルフラグをOFFにして下さい!!
売上請求伝票の明細に外税と内税が混在する場合で、伝票レベルフラグがONになっている税金情報マスタを使っている場合、まとめ請求書の消費税の再計算処理でエラーになります。
まとめ請求書での消費税再計算の設定
まとめ請求書で消費税を再計算するためには、取引先マスタに"まとめ請求書作成条件"が設定されている必要があります。設定されていない場合は、再計算できません。
同様に支払依頼伝票で再計算する場合には、"支払依頼伝票作成条件"が設定されている必要があります。
【ポイント】
- まとめ請求書で消費税を再計算するためには、まとめ請求書作成条件の設定が必要です。
- 支払依頼伝票で消費税を再計算するためには、支払依頼伝票作成条件の設定が必要です。
まとめ請求書作成条件の設定
まとめ請求書で消費税を再計算する場合、取引先マスタに設定するまとめ請求書作成条件は、消費税再計算フラグをONにします。
◆消費税再計算 [IsTaxRecalculateJP]
まとめ請求書で消費税を再計算する場合はONにします。この値はまとめ請求書にも引き継がれます。
◆消費税調整伝票タイプ [JP_TaxAdjust_DocType_ID]
まとめ請求書で消費税の再計算を行い、調整が必要になった場合、まとめ請求書を完成にする際に自動的に消費税を調整する売上請求伝票が作成されます。その際に使用する伝票タイプを入力します。消費税再計算フラグがONの時に必須入力となります。
◆消費税調整プライスリスト [JP_TaxAdjust_PriceList_ID]
消費税を調整する売上請求伝票で使用するプライスリストを設定します。
◆消費税調整摘要科目 [JP_TaxAdjust_Charge_ID]
消費税を調整する売上請求伝票で、消費税を調整するために使用する摘要科目を入力します。消費税再計算フラグがONの時に必須入力となります。
◆消費税調整税金情報マスタ [JP_TaxAdjust_Tax_ID]
消費税を調整する売上請求伝票で、消費税を調整するために使用する摘要科目と一緒に使用する税金情報マスタを入力します。ここに設定する税金情報マスタの税率は0%の必要があります。消費税再計算フラグがONの時に必須入力となります。
◆消費税調整説明文 [JP_TaxAdjust_Description]
消費税を調整する売上請求伝票の説明フィールドに入力する文言を入力する事ができます。
【ポイント】
- まとめ請求書で消費税を再計算するためには、まとめ請求書作成条件の設定で、消費税再計算フラグをONにして、必須入力となっているフィールドの設定をする‼
まとめ請求書タブ
◆消費税再計算 [IsTaxRecalculateJP]
取引先マスタに設定されている、まとめ請求書作成条件の同フラグの値が引き継がれます。取引先マスタにまとめ請求書作成条件が設定されていない場合はOFFになります。変更する事はできません。
◆消費税調整売上請求伝票 [JP_TaxAdjust_Invoice_ID]
まとめ請求書で消費税を再計算する場合で、消費税を調整する必要がある場合は、まとめ請求書を完成にする時に、消費税を調整する売上請求伝票が完成の状態で自動作成されます。その作成した売上請求伝票がこのフィールドに自動的に代入されます。まとめ請求書をボイドする場合には、ここに代入されている売上請求伝票が”完成”の場合にはリバースされます。
【補足説明】課税標準額合計と税額合計の金額
消費税を再計算する場合、課税標準額合計[TaxBaseAmt]と税額合計[TaxAmt]フィールドの値は、再計算後の消費税の金額になります。まとめ請求明細の単純合計ではありませんので、注意して下さい。これにともない、総合計[GrandTotal]と未入金金額合計[OpenAmt]の値も、再計算した消費税の金額の差異を加減算した金額になります。
まとめ請求書明細タブ
◆消費税調整明細 [IsTaxAdjustLineJP]
消費税を調整するための明細の場合はONになっています。このフラグがONになっていることで、この明細と結びつく売上請求伝票の総合計金額が、まとめ請求書明細の税額[TaxAmt]に代入されます。そして明細行合計[TaxBaseAmt]と総合計[GrandTotal]と課税標準額[TaxBaseAmt]は0になります。このフラグの制御により、まとめ請求書タブの各種合計金額の値の整合性を確保します。
【補足説明】消費税調整明細の金額について
消費税調整明細がONになっているまとめ請求書明細のデータは、請求書を完成にする時に自動作成されます。その時のステータス欄の各種金額は次のようになります。
- 明細行合計 … 0。※消費税を調整するための売上請求伝票であり明細行合計に影響を与えないために、0にしています。
- 総合計 … 消費税を調整する金額 = 売上請求伝票の総合計の金額。消費税を調整するための売上請求伝票であり、請求金額に影響するために総合計には調整する金額を入力しています。 ※売上請求伝票の伝票タイプのベース伝票タイプがARCの場合は符号が反転されます。
- 課税標準額 … 0。
- 税額 … 総合計と同額。
- 入金済金額 … 0。
- 未入金額 … 総合計と同額。
税額計算タブ
このカスタマイズで追加したタブです。税額計算タブのレコードは、消費税を再計算するかどうかに関わらず作成されます。
◆課税標準額 [TaxBaseAmt]
再計算前の課税標準額 = 売上請求伝票の税額計算タブの課税標準額を合算した金額です。
◆税額 [TaxAmt]
再計算前の税額 = 売上請求伝票の税額計算タブの税額を合算した金額です。
◆再計算課税標準額 [JP_RecalculatedTaxBaseAmt]
再計算した課税標準額です。
◆再計算税額 [JP_RecalculatedTaxAmt]
再計算した税額です。
◆調整税額 [JP_TaxAdjust_TaxAmt]
再計算前の税額と再計算した後の税額の差額です。
◆税額調整請求伝票明細 [JP_TaxAdjust_InvoiceLine_ID]
再計算した消費税額にするために作成された売上請求伝票明細が自動的に入力されます。
自動作成する消費税を調整する売上請求伝票について
まとめ請求書で消費税を再計算する場合、まとめ請求書を完成にする時に、消費税を調整するための売上請求伝票が、まとめ請求書作成条件をもとに自動的に作成されます。
自動作成する売上請求伝票の主なフィールドの値は下記のようになります。
- 伝票タイプ … まとめ請求書作成条件の"消費税調整伝票タイプ"
- 請求日付 … まとめ請求書の"締日"
- 転記日付 … まとめ請求書の"転記日付"
- プライスリスト … まとめ請求書作成条件の"消費税調整プライスリスト"
- 説明 …まとめ請求書作成条件の"消費税調整説明文"
- 摘要科目 … まとめ請求書作成条件の"消費税調整摘要科目"
- 税金情報 … まとめ請求書作成条件の"消費税調整税金情報"
売上請求伝票の明細は、まとめ請求書の税額計算タブにある、調整が必要になるレコード数分作成されます。
自動作成した消費税を調整する売上請求伝票は、まとめ請求書明細の最終行に追加されます。
まとめ請求書明細の最終行に追加された、自動作成した消費税を調整する売上請求伝票は、消費税調整明細フラグがONになっており、他の明細と区別する事ができます。
まとめ請求書での消費税再計算のカスタマイズについて
まとめ請求書での消費税再計算のカスタマイズは、IJPiereTaxProviderのインターフェースクラスにdefaultメソッドとして実装しています。そのためタックスプロバイダーをプラグイン実装する事で処理を差し替える事ができますので、必要に応じて自由にカスタマイズして下さい。
追加テーブル
◆JP_BillTaxテーブル
まとめ請求書[JP_Bill_ID]と税金情報[C_Tax_ID]と税込価格[IsTaxIncluded]の3つのカラムでユニークになります。
追加カラム
◆JP_Billテーブル
- IsTaxRecalculateJP
- JP_TaxAdjust_Invoice_ID
◆JP_BillLineテーブル
- IsTaxAdjustLineJP
◆JP_BillSchemaテーブル
- IsTaxRecalculateJP
- JP_TaxAdjust_Charge_ID
- JP_TaxAdjust_Description
- JP_TaxAdjust_DocType_ID
- JP_TaxAdjust_PriceList_ID
- JP_TaxAdjust_Tax_ID
2022年3月1日 Ver9
転記処理が即時転記以外の場合(システムコンフィグ設定「CLIENT_ACCOUNTING」の値が"I"以外の場合)に、伝票ステータスが"完成"にならない不具合を解消しました。
- 【JPIERE-0508】まとめ請求書/支払依頼伝票での消費税再計算
- 【JPIERE-0507】まとめ請求書の前回請求金額と前回入金額の自動代入
- 【JPIERE-0369】摘要科目による外税と内税の明細の混合対応
- 【JPIERE-0278】支払依頼伝票作成(プロセス)
- 【JPIERE-0277】支払依頼伝票作成条件
- 【JPIERE-0276】支払依頼伝票作成(マニュアル)
- 【JPIERE-0275】まとめ請求書作成(マニュアル)
- 【JPIERE-0216】入金伝票でまとめ請求書を指定した消込処理
- 【JPIERE-0214】入金伝票の消込処理タブでの加入金消込処理の修正
- 【JPIERE-0108】まとめ請求書(フォーマット1)
- 【JPIERE-0107】まとめ請求書作成(プロセス)
- 【JPIERE-0106】まとめ請求書