オープンソース ERPシステム iDempiere(アイデンピエレ) Lab
iDempiere = OSGi + ADempiere。
iDempiere(アイデンピエレ)とはADempiere(アデンピエレ)の後継となるCompiere Distributionです。iDempiereの頭文字の"i"は、OSGiの"i"であり、ADempiereとの違いはその名前が示す通りOSGiを取り込んでいる事です。iDempiereでは、OSGiの仕様を取り入れプラグインによる機能拡張ができるのようになっています。このプラグインによる機能拡張は、他の(商用)ERPと比べても優れている点だと思います。
Compiere Distributionは業務アプリケーションの開発基盤(開発フレームワーク)という一面もあると説明してきましたが、iDempiereではプラグインによる機能拡張により、業務アプリケーションの実行基盤というインフラとしての役割も担える器になりました。そして世界中の開発者は作ったiDempiereのプラグインを有料/無料を問わず公表することができ、ユーザーはダウンロードして試し、導入する事ができます。
そしてもうひとつ、ADempiereとiDempiereの大きいな違いがWeb-UIです。Web-UIが全面的に改修されており、よりいっそうユーザービリティ―を意識した作りになっています。
iDempiereはライセンス料が”無料”で使用する事のできる”オープンソース”の”ERP"
iDempiereは"業務アプリケーションを開発するためのフレームワーク"
ERPとしてのiDempiere
◆業務的な特徴
iDempiereは商用のERPと比較しても機能的に見劣りしないほどの業務管理機能を提供しています。
- 購買管理、在庫管理、販売管理、生産管理、会計管理、顧客管理など、一連の業務機能が既に実装されている。
- 1企業で導入できるのはもちろん、グループ企業(複数企業)にも導入できる。
- 世界中で使用されておりグローバル対応(多言語対応、多通貨対応)されている。
- 充実した内部統制機能(業務フローの統一、権限管理や操作ログの履歴管理など)。
◆システム的な特徴
オープンソースとして世界中の人々が開発に参加するのは、有用性がありシステムアーキテクチャが優れている証拠!! その洗練されたシステムアーキテクチャが複雑なERPの実装を支えています。
- Compiere ⇒ ADempiere ⇒ iDempiere(OSGi + ADempiere)と発展している元祖オープンソースのERPの系譜。
- OSGiのプラグイン構造による機能の拡張性の高さとアプリケーション辞書とモデル駆動アーキテクチャを中心とした、柔軟性と開発生産性の高さ。
- クラウド環境でも利用できる(レスポンシブデザインにも対応)。
業務アプリケーションの開発フレームワークとしてのiDempiere
iDempiereはオープンソースのERPですが、その本質は業務アプリケーションの開発フレームワークです。iDempiereはERPとして多くの業務管理機能を提供しているだけでなく、業務アプリケーションの開発フレームワークとして、業務アプリケーションを開発するうえで必要となる様々な機能を提供しています。それらの機能を活用する事で、業務アプリケーションを生産性高く開発する事ができます。
ERPとしてのiDempiere
iDempiereの業務管理機能の全体像
iDempiereの業務機能の中心となるのが「販売管理」、「購買管理」、「在庫管理」、「生産管理」、「会計管理(財務会計/管理会計)」、「顧客管理(CRM/SFA)」の6つです。
◆購買管理
「購買管理」では「発注管理」で仕入先に商品を発注し、「入荷管理」で発注した商品の受入を行い、「仕入請求管理」で仕入先から送られてきた請求書を管理します。「仕入請求管理」で債務が認識され、「支払管理」で債務の支払いが行われ、最終的に「出納帳管理」で預金出納帳に記帳し、実際の口座残高との整合性を保ちます。
◆在庫管理
「在庫管理」では「棚卸」と「在庫評価」が行え、在庫管理に関係する決算処理が行えるようになっています。そして、倉庫間の「在庫移動」や足りなくなった在庫の「在庫補充」が行えます。販売目的ではなく、社内で消費した在庫は「社内使用在庫」として費用処理(在庫調整)する事もできます。商品Aと商品Bを1つの袋につめて商品Cという新たな商品を作成するような、セット商品を作成する機能もあります。
◆生産管理
iDempiereには標準機能として組み込まれいている「Manufacturing Lite」とプラグインとして提供されている「Lebero Manufacturing」の2つの生産管理があります。
◆販売管理
「販売管理」では「受注管理」で得意先からの受注を処理し、「出荷納品管理」では倉庫から商品をピックアップし、出荷処理を行い、納品先の検品まで管理する事ができます。「売上請求管理」では、売上を計上するとともに請求書を発行し、債権管理を行います。「入金管理」で債権の消込み行われ、最終的に「出納帳管理」で預金出納帳に記帳し、実際の口座残高との整合性を保ちます。
◆会計管理(財務会計/管理会計)
「購買管理」、「在庫管理」、「販売管理」の一連の処理の裏では自動で仕訳が起票されており(以下、自動仕訳)、それらの仕訳を集計して「会計管理」で色々な分析軸により集計した管理会計レポートを作成する事ができます。そして、「会計管理」では、一般会計仕訳(GL仕訳≒振替伝票)として、決算整理仕訳などを起票できるようになっており、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表も作成する事ができます。
◆顧客管理(CRM:Customer Relationship Management)
iDempiereの「顧客管理(CRM:Customer Relationship Management)」は「取引先マスタ」を中心にして「リクエスト管理」と「見込顧客管理」の機能を提供しています。
「リクエスト管理」は顧客の要求やクレームをiDempiereのマスタやトランザクションデータと結びつけて管理し、社内で共有する事ができます。得意先からの取い合わせの履歴管理なども行える事から、小規模なコールセンターなどにも活用できます。
「見込顧客管理」はいわゆる営業支援システム (SFA: Sales Force Automation)と言われる機能です。
iDempiereのシステム構成
OSにLinux、データベースにPostgreSQLを選択する事により、iDempiereに係るソフトウェアのライセンス料を"無料"にする事もできます。
業務アプリケーションの開発フレームワークとしてのiDempiere
iDempiereは、"データを入力する画面"と"入力したデータを処理するビジネスロジック"、"処理したデータを確認するレポート(帳票)"の3つの機能を中心に業務を処理し、管理するシステムです。ここからは、この3つの機能の開発方法を概要的に説明します。
iDempiereの開発イメージ
iDempiereは業務アプリケーションの開発フレームワークとして、コーディングは基本的にビジネスロジック(データ処理ロジック)部分に集中して行えばよく、ビジネスロジック以外の業務アプリケーションを作成する上で汎用的に必要となる機能は既に用意されており、それらの機能を活用する事で生産性高く開発する事ができます。
データ入力画面の開発
iDempiereはウィンドウと呼ばれる汎用的なデータ入力画面と、フォームと呼ばれ非定型の入力画面を作成する事ができます。
◆ウィンドウ(定型入力画面/標準入力画面)
ウィンドウはパラメータ設定だけで作成する事ができます。データを格納するデータベースのテーブル定義に、ウィンドウを作成するためのパラメータ設定を加える事でiDempiereが自動作成します。簡単なデータ入力画面であれば、数10分程度で作成する事ができます。
◆フォーム(非定型入力画面)
ほどんどのデータ入力画面はウィンドウで作成する事ができますが、ある特定の業務においては特別なデータ入力画面が必要になる場合があります。そのような場合はフォームによりデータ入力画面自体を開発して、iDempiereに組み込むことができます。
ビジネスロジックの実装
iDempiereではデータを登録・更新・削除時に独自のビジネスロジックを実装する事ができます。そして業務アプリケーションとして日次や月次のバッチ処理も実装する事もできます。
◆データの登録・更新・削除時のビジネスロジックの実装
iDempiereでは、1つのデータベースのテーブルに対して1組のモデルクラスというJavaのクラスを作成する事で、データを登録・更新・削除時にビジネスロジックを実行する事ができます。
◆プロセス(バッチ処理)としてのビジネスロジックの実装
iDempiereではバッチ処理の事をプロセスと言い、データ入力画面(ウィンドウ)やデータ検索画面、メニューツリーなどから実行する事ができます。プロセス自体は、ビジネスロジックとしてJavaでコーディングする必要がありますが、バッチ処理の実行条件を入力する画面はパラメータ設定だけで作成する事ができます。プロセス実行のログの記録と出力も、予めiDempiereで用意されているメソッドを使用するだけです。
レポート(帳票類)の開発
iDempiereではレポート(帳票)を開発するために、「オンラインレポート」、「会計レポート」、「ジャスパーレポート」の3種類のツールが提供されています。
◆オンラインレポート
オンラインレポートでは、管理及び分析のためにデータを一覧表示する"一覧レポート"と、取引先に証票とする送付する"定型レポート"をパラメーター設定で作成する事ができます。
◆会計レポート
会計レポートは、財務部・経理部のパワーユーザー向けのレポート開発ツールです。レポートの表示対象となるデータは仕訳のデータに限られますが、ERPとしてリアルタイムに貸借対照表や損益計算書が作成できるのはもちろん、管理会計として多次元分析レポートも簡単に作成する事ができます。
◆ジャスパーレポート
ジャスパーレポートはオープンソースのビジネスインテリジェンス(BI: Business Intelligence)ツールであり、帳票作成ツールです。iDempiereでは、ジャスパーレポートの帳票レイアウト作成ツールであるJaspersoft Studioで作成したレポート定義を取り込んで、出力する事ができます。
iDempiereのトレーニング(有料)
iDempiereを短期間で体系的に学べるトレーニングプログラムの紹介。