オープンソースERP Compiere Distributionとは
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Compiere(コンピエール)とは、誤解を恐れず端的に表すと”元祖!!無料で使用できるオープンソースのERP”です。Compiereはとても大きなシステムであり、業務機能やシステムアーキテクチャを理解し、使いこなせるようになるにはそれなりの労力が必要ですが、既存のERPが非常に高価なのに比べると無料で使えるというのはとても魅力的です。
Compiereの魅力は価格面だけではありません。Compiereの持つ洗練されたシステムアーキテクチャこそ本当の魅力なのです。システム化の範囲が大きくなればなるほど、複雑になりがちな業務システムを、Compiereならシンプルで柔軟性を保ちながら機能を拡張していく事ができるのです。
有用性があり、システムアーキテクチャが優れているからこそ、Compiereから派生して作られているERPがいくつも存在し、世界中のシステムエンジニアが(多くの場合は無償で)開発に参加しているのです。
オープンソースのOSとして有名なLinuxには、CentOSやFedora、Ubuntuなど数多くのLinux Distributiion(リナックス ディストリビューション)と呼ばれるものが存在します。リナックス ディストリビューションとは、Linuxを一般利用者が導入(インストール)したり、利用できる形にまとめ上げたもの(頒布形態)の事だそうです(※wikipedia参照)。
このサイトの話題の中心であるCompiere(コンピエール)には、Compiereから派生して作られているオープンソースのERPソフトウェアがいくつか存在します。その違いは頒布形態の違いというわけではありませんが、このサイトでは、LinuxのようにCompiereも発展して欲しいとの願いを込めて、Compiereをもとにして作成されているERPをまとめてCompiere Distribution(コンピエール ディストリビューション)と呼ぶことにしました。
このサイトで主に取り扱うCompiere Distributionは次の通りです。
米APTEAN社が中心となり開発している元祖オープンソース ERP Compiere(コンピエール)も、Compiere Distributionの一つとして扱います。最新版は有料で商用ライセンスとなるエンタープライズエディションがバージョン3.8(ソースコード非公開)で、無料でGPLライセンスのコミュニティーエディションがバージョン3.3になっています。 ただ、残念な事に、今後コミュニティーエディションがバージョンアップされるかどうかは不透明な状況であり、Compiere(コンピエール)には、オープンソース(OSS)のERPとしての発展は期待できない状況です。
OpenBrabo(オープンブラボ)は2006年初頭にCompiereの開発コミュニティーからフォークして開発されているCompiere Distribuitonです。独自に発展しており、2009年からBossie(Best of Open Source Software) AwardsのWinnerに毎年選出されるなど、輝かしい実績を誇ります。
ペインに本社があるOpenBravo社が中心となって開発を進めているCompiere Distributionです。
ADempiere(アデンピエレ)は2006年頃にCompiereの開発コミュニティーからスピンオフして作成されているCompiere Distributionです。現在、本家コミュニティーのコミッターのほとんどがiDempiere(アイデンピエレ)に移り、発展的解散状態ですが、一部の有志による活動が継続されているようです。
iDempiere = OSGi + ADempiere。
iDempiere(アイデンピエレ)とはADempiereの後継となるCompiere Distributionです。Web-UIが全面的に改修されており、よりいっそうユーザービリティ―を意識した作りになっています。OSGiの仕様を取り入れプラグインによる機能拡張ができるのがiDempiereの最大の特徴と言って良いでしょう。他のERPと比べても優れている点だと思います。世界中の開発者は作ったiDempiereのプラグインを有料/無料を問わず公表することができ、ユーザーはダウンロードして気軽に試し、導入する事ができます。Web-UIの充実と、OSGiの採用によりiDempiereはオープンソースERPのデファクトスタンダートともいえる存在になっています。
JPiere(ジェイピエール)とは株式会社OSS ERP Solutionsが中心となって開発している、オープンソースのERP iDempiere(アイデンピエレ)の日本商習慣に対応したディストリビューション(頒布[はんぷ]形態)です。iDempiereを日本の商習慣に対応させるだけでなく、操作を補助するユーティリティーやJPiereオリジナルレポート、バッチ処理などiDempiereを拡張する多くの機能を追加し、1つのパッケージにして提供しています。
JPiereは"Japan"+"iDempiere"であり、"JP"は日本(Japan)を、"iere" は"yell"とかけて"応援"の意味を込めています。つまり"JPiere"は、日本企業をシステム面から支援することを目的に開発されているOSS(オープンソース)のERP iDempiereのディストリビューションです。
JPiereはオープンソースのERP iDempiereのディストリビューションとして、コアとなるiDempiereのソースコードには、極力手を入れず(Modificationは最小限)、アプリケーション辞書や2Pack、OSGiの機能を最大限に活用して開発しています。この事によりJPiereは、iDempiereの最新機能を取り込む事ができます。
Compiereはソースコードの公開後、開発コミュニティーと、開発の中心人物であったヨルグ・ヤンケ (Jorg Janke)氏が設立したComPiere社(※社名を表すCompiereは"P"を大文字にするのが慣習)が中心になって開発が進められます。Compiereは2002年から4年間、SourceForge(※オープンソースのソフトウェア開発のためにデータの保管と各種サービスを提供しているサイト)のTOP10プロジェクトにランキングされ、2006年には100万ダウンロードを達成するなど、オープンソースのERPとして注目を集めます。しかし、2006年にComPiere社がベンチャーキャピタルから出資を受けると、Compiereは商業化を強く模索するようになります。このComPiere社の商業化の方針に異を唱えた開発コミュニティーのメンバーが2006年にCompiereから分離して、CompiereをもとにしてADempiere(アデンピエレ)の開発を始めます。
商業化に舵を切ったCompiereは求心力を失い、ComPiere社は2010年6月にConsona社に買収され、そのConsona社は2012年8月に、CDC Software社と合併してAptean社となっています。ERPソフトとしてのCompiereは現在も存在していますが、オープンソースとして提供されているのは2009年に公開されたバージョン3.3までで、これ以降2013年2月現在の最新バージョン3.8に至るまでソースコードは公開されていません。今後も最新バージョンのソースコードが公開されるかどうかは不明であり、CompiereにはオープンソースのERPとしての発展は期待できない状況です。
Compiereの商業化後、注目を集めたのがADempiereです。ADempiereは、オープンソースとしての精神を大切にしながら開発が進められ、Compiereに代わってオープンソースERPのデファクトスタンダードになっていきます。
オープンソースとしての精神を大切にして開発が進められ、ある一定の成功を収めたとも評価できるADempiereですが、開発コミュニティーの内部はその開発方針により2分されて行きます。一方は業務アプリケーションとしての品質を大切にし、なるべく不具合の無い状況でソースコードをコミットしようと考える開発グループと、一方はオープンソースとしての性格を利用し、不具合はソフトの利用者が発見し報告してくれれば良いとして、それほど品質の良くないソースコードもリポジトリにコミットしようとする開発グループです。
そして2011年頃、品質を重んじる前者のグループに属する開発者がADempiereからフォークし、OSGi(※プラグイン構造を実現するための仕様)の概念をプラスしたiDempiere(アイデンピエレ)を開発し始めました。今ではADempiereのトップコミッターの多くがiDempiereに移行して開発が行われており、iDempiereは実質的にADempiereの後継となるオープンソースのERPとなっています。