米Googleは2015年5月19日(現地時間)、Webブラウザ安定版の最新バージョンとなる「Chrome 43」(バージョン43.0.2357.65)をWindows、Mac、Linux向けに公開しました。
この直後の5月22日にGoogle Chromeを最新版に更新した方からiDempiereのフォーラムに、iDempiereのWeb-UIの画面の一部が表示されなくなる現象が報告されました。
この件に対して、私にもサポート依頼が数件届きましたが、iDempiereのコミュニティーの対応が素早かったため、私の方で特別に何かしなくても対処する事ができました。この時のiDempiereコミュニテーの対応がとてもスピーディーで、世界中の人々が情報と知識を持ち寄り解決に至るオープンソースの醍醐味ともいえるものでしたので、ぜひ皆さんに知って頂きたいと思います。
iDempiereフォーラム:ZK UI Problem in Chrome
このフォーラムのトピックに投稿している人の多くは、iDempiereコミュニティーでも精力的に活動されている方々です。5月23日には"Hiep Lq"さんが、詳細なテストが必要としながらも最初のパッチを投稿しています。それに対して、iDempiereのアーキテクトである"hengsin"さんが、概ね良い修正案なのではないかとコメントしています。
そして、最終的に5月28日にパッチが正式にリポジトリにコミットされます。
IDEMPIERE-2647:ZK UI Problem in Chrome
Carlos Ruiz committed : 15262f6
不具合が報告されてから、1日でパッチが投稿され、世界中の優秀な技術者から情報や知識が持ち寄られて、1週間足らずで正式にパッチがコミットされました。
不具合の原因がGoogle Chromeのアップデートですので、これはある意味iDempiereに限らずどのWebアプリケーションでも同様のブラウザ問題は発生する可能性はあると思いますし、発生前に完全に回避するのも非常に難しいものと思います。
この避けがたい問題に対して、報告から1日でパッチが投稿され、1週間足らずにリポジトリにパッチが適用されるというのは、非常に素晴らしい対応だったのではないかと思います。
オープンソースだからという理由だけで根拠もなく不安がる人に、ぜひ今回の対応を知って頂きたいと思います。魅力あるオープンソースのプロジェクトには、世界中の優秀な技術者が集まり、協力しあい、よりよいシステムを作り上げようと日夜開発が続けられています。商用ソフトウェア(プロプライエタリなソフトウェア)と異なり最終的な責任の所在となる会社こそ存在しませんが、iDempiereコミュニティーに参加されているエンジニアの多くは、プライドと生活をかけて参加されていますので(私もその一人と自負しています)、クリティカルな不具合が発見された場合の対応は、今回のようにスピーディーに対応して頂ける事がほとんどです。
だから100%安心だと言い切るつもりはありませんが、根拠もなく不安がる必要もないと思います。反対に商用ソフトウェアだから100%安心だという事もないと思います。商用ソフトウェアでも開発した会社が不具合に対応できない可能性はありますし、そもそも開発した会社自体が倒産してしまい保守されなくなる可能性も、否定できないと思います。
そのようなリスクを客観的に評価して頂ければ、iDempiereのようにコミュニティーベースで世界中の優秀な開発者が集まって開発しているオープンソースのアプリケーションは、商用のソフトウェアとあまり変わらないくらいの安心感はあるのではないでしょうか!?。考えようによっては、倒産リスクが無く、サポート先を確保するのも容易なので、小さい会社の商用アプリケーションより、よっぽど安心だと言えるかもしれません。